認められること
今の職場は、経営コンサルティングファームです。企業法務を中心とした専門職の強い仕事をしています。
私は全くの門外漢。社長は早口で、次から次へ出てくる言葉は全て専門用語。はじめは吹き飛ばされそうでした。
ですが、年の功なのか、今までの経験や知識も役に立ち、意外に早くに馴染めた気がします。
様々な契約書や申立書などを読んでいるうち、何が求められているのかのも、何が足りないのかも想像がつく。
さすがに採用後何日もしないうちに色々と提案をすると拒否反応を示されるので、スタンドアロンでデータベースを作って、業務運用の改善にならないかと試行錯誤を繰り返していました。
以前、秘書をしていたこともあり、気難しいボスの仕事の調整も、あまり迷うことはありません。
幸運にも、そういった一つ一つのことが、順調に認めてもらえ、次々に新しい業務を任されます。
とは言え、これは、専門職から見れば、いわゆる「雑用」の部分。
私としたら、あまり緊張することも背伸びすることもなく、自分の能力の範囲内でがんばれば一定の評価を得られるので、不謹慎な言い方をすれば「楽だなあ」といった感じで日々過ごしていました。
当然、仕事に評価が得られれば、社長との関係も良くなります。
勤めて1か月もしないうちに、マイペースで仕事ができるリラックスした環境が整った気がしていました。
【過去記事】
i-am-an-easy-going.hatenablog.com
i-am-an-easy-going.hatenablog.com
可愛い人
社歴の若い会社なので、古参といっても僅か1年半くらいだそうですが、従業員の中で2番目に古い彼女は二児のお母さんです。
上のお子さんが小学生で下のお子さんが幼稚園。まだまだ手がかかるため、パートで勤務なさっています。
それでも、会社設立後、初めて雇用した女性ということで、私が入社した当初は、社長は何でも彼女でした。
「詳しいことは彼女に聞いて」が口癖で、信頼なさっているのがよく伝わってきました。
いつもニコニコしていてよく笑う人です。いるだけで癒される、そんな感じです。
その彼女が、お昼休憩の時、いつものようにふうわりと微笑みながら言いました。
「何だかね、最近、社長は私に仕事を言わないの。それでね、ずっと手が空いててね、社長に"何かありませんか"って聞くんだけど、何にもないって言うの」
それから続けて言いました。
「どうしたらいいのかなってね、ちょっと不安なの」
お子さんのことで急に休まなければならないことの多い彼女にとって、今の職場は、社長との信頼関係も築けていて、勤務時間など柔軟に対応してもらえるとても大切な場所です。
それが、突然やってきた新参者の私に仕事が割り振られて仕事が来なくなる。一年前は息つく暇もないくらいにバタバタしていた筈なのに。
気づきませんでした。毎日一緒にお昼を食べていながら、穏やかに笑っている彼女の状況を慮ることが全くできていなかった。
彼女は、最近よく「眠れない」とか「いらいらする」とか「疲れて家事ができない」と言うことを話していました。
私はなんて自分本位で、周りが見えていなかったのでしょう。そして、色々な感情が湧いたはずなのに、いつも笑顔でいやな態度を取らないでいてくれた彼女の我慢強さと優しさに感謝しました。
面倒な人
今月で勤務して1年が経つそうです。彼女は3人お子さんがいらっしゃいます。入社初日から容赦のない人でした。
月に何回かは彼女と二人きりでお昼休憩になります。つい先日、彼女に言われました。「私は認められたいの。注目されたい。褒められたい。社員になりたいの。」
「あなたは、来た早々から態度が大きい。鋼の心臓だわ。私は、仕事で認められない分、他で補いたいと思っているの。だから、邪魔しないで」
初日から感情を露(あらわ)にした彼女が、私は苦手です。人数の少ない中、どうしたらいいかとずっと思っていました。
それでも、彼女が物品の補充や小口現金の管理を積極的にやってくださるので、ずいぶん助けられています。
【過去記事】
i-am-an-easy-going.hatenablog.com
私にできること
私と言う存在が、知らない間に、先輩である二人の人たちの日常に少なからず影を落としていたのです。
随分気を遣っているつもりでしたが、実際は何にも配慮できていなかった。
午後、可愛い人には「もし手が空いているようだったら仕事を助けてほしい」と声をかけてみました。
彼女は「喜んで!」と言って手伝ってくださいました。
「認められたい」と言っていた彼女には、素直に感謝を言葉にするようにしています。「私はいつも行き届かないので、あなたの気遣いにとても助けられています。」
それから、共有スペースが片づけられていると、きれい好きの社長に、彼女が整理してくれたことを伝えるようにしています。
社長が「ありがたいねえ」と満足そうに言っていたことは、彼女にきちんと伝えます。
それでも、これからもまだまだ色々とあると思います。
私にできることは、きちんと認めること。起こったことも、他人の功績も。感謝はきちんと言葉にする。
丁寧に。
そして、率直に気持ちを伝えてくれた二人のことを大切に。
あとは、自然に任せるだけだ。