志村けんさんが亡くなられました。
寂しくて「驚いたね」と誰かと言葉を交わしただけで、声が詰まります。
子供の頃、父が気難しくて、テレビは父が決めた番組しか見ることができなかったのですが、土曜日の夜「8時だよ、全員集合」だけは見せてもらえました。
父は「子供が見る番組ではない」といい顔はしませんでしたが、当時、土曜の夜の家族団らんの象徴のような番組だったのだと思います。
翌週の学校では、子供たちが、あちこちでドリフのコントの真似をしていました。
じゃんけんをするときに「最初はグー」と言うのは、そういうものだとずっと思っていましたが、志村けんさんのコントがきっかけだったのですね。全く知りませんでした。
「しむらけん」とか「ドリフ」とか「かとちゃん」とか、耳にしただけで、無邪気な子供の頃が蘇ります。
やがて、ビートたけしさんの「タケチャンマン」に取って代わられるのですが、家では最後まで「8時だよ、全員集合」でした。
「タケチャンマン」に熱中する子供たちは、どことなく早熟だったイメージがあります。私も見たいなあ、と学校で友達が真似るギャグを見ながら思っていました。
次第に学校での話題が「8時だよ、全員集合」から「タケチャンマン」に変わってしまった頃には、私自身は、すっかりテレビから離れて、ラジオやレコードや読書に没頭するようになっていました。
私は「バカ殿」を見たことがありません。
けれど、志村けんさんが白塗りのお殿様の格好でコントをしていたことは知っています。
志村けんさんは、多くの人たちの思い出の一コマにしっかりと焼き付けられて、折あるごとに思い出されるのでしょう。
その思い出は、いつもほのぼのと温かい。思い出すたび、つい笑みがこぼれる。
人々の記憶にしっかりと刻まれて、語り継がれていくことは素晴らしいことです。
でも今は、ただ、ただ寂しい。こんなに喪失感に襲われていることに戸惑うくらい。どんなに言葉を尽くしても、表現しきれません。
あなたにまつわる思い出は、すべて楽しいものばかりです。
これから幾度となく、あなたのことを思い出すでしょう。そして、その時は、きっと笑っているはずです。
志村けんさん。ありがとうございました。
安らかにお眠りください。