朝8時前
信号待ちの車はわずか
すれ違った自転車は2台
水曜日のラッシュアワー
ふらふらと彷徨う青年
道沿いのラーメン屋の軒先に
しゃがんだ彼と
ふいに目が合う
のっそりと彼は立ち上がり
薄笑いを浮かべて
私の方へ向かって歩き出した
紫のスウェット
伸ばした髪を一つに束ね
両手をズボンのポケットにつっこんで
珍しそうに
見慣れた景色に溶け込めない
新参者の私を見詰めながら
急に私は怖くなる
信号が青になった瞬間
私は駆け出した
全身が軋む
ぎしぎしと
鉛のように重い身体を全力で引き摺って
バス停まで
走った
帰宅して母に話すと
「彼は優しいのよ。普段はボタン式信号機の前に座っていて、お母さんが自転車で近づくと、何も言わずにボタンを押してくれるの」
私には灰色に見える
朝寝坊になった街の景色は
彼には
どんな風に見えているのだろう
色を失くした街並みに
紫のスウェットが
急に鮮やかによみがえり
まぶしくて
私は
ふいに色づいた街の中佇む
モノクロの自分が恥ずかしくなった
【過去記事】
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