初回投稿日:2020-08-26 更新日:2022-03-12
『晴れた日にはキッチンで』
著者は飛田和緒(ひだかずを)さん。
本書は、日記形式で綴られたレシピ集です。
初版が2005年2月なので、15年以上前の日記。
日ごとの日記にタイトルが付いているのが読みやすい。
日記には、何月何日という日にちとその日のお天気だけが記されています。
正式に何年に書かれたものかの記載はありませんが、春→夏→秋→冬→春→夏→秋と2年弱の日々の記録が本になっているのです。
いつ書かれたか、正確な日付(何年とか何曜日とか)を記すことで特定の日のイメージが想起されることを避けたのかもしれません。
本を手に取る人それぞれにある、いい日、わるい日。
この本を手に取った人が、穏やかな気持ちで最後まで頁をめくることができるように・・・そんな配慮だと思ってしまうのは、少し深読みでしょうか。
料理家がレシピ付きで書く日記なのに、この本には、写真が一切ありません。
全てイラスト。
ほぼ、全ての日に作ったメニューが、イラストと文字だけで綴られている。
本は、B6サイズのコンパクトな大きさです。
その小さなスペースに、きゅきゅっと詰め込まれた食材や調理手順のイラストと手書き文字の説明がかわいい。
レシピは、和食を中心に、気取りのない居酒屋メニューから、超簡単デザートまで何でもあります。
筍の下ごしらえや、梅干しなどの保存食のレシピもあります。
イラストだけのレシピは、意外にも、無駄がなくて分かりやすい。
真似してすぐに作れそうなものもたくさんあります。
調理器具が大好きなので、料理の盛り付けイラストに描かれた器や、なべ、菜箸、おろし金、すり鉢などもとても興味深い。
本書は、飛田和緒さんが30代後半から40歳になるまでの日記です。
当時、ご主人はレーサーだそうで、ゴールデンウィークは例年、富士スピードウェイというサーキットでのレースに出場なさっていて、不在だったそうです。
和緒さんの誕生日は、5月3日。
ご主人の誕生日は、5月5日。
お祝いの日。いつも和緒さんは、自分のためだけのご飯を作っていたらしい。
それが、和緒さんが40歳になる誕生日の年、珍しく、ご主人が家にいられます。
サーキットが改修工事だったからだそうですが、その日のタイトルは「今年はひとりじゃない」
お友達を招いて、居酒屋メニューでわいわいがやがや、楽しそうです。
食を愛する人の周りには、自然と人が集まってくる。ふと、そんなことを考えました。
この年、和緒さんは40歳で初めてのお子様を授かります。
例年と違って賑やかに過ごすご夫婦の誕生日。
幸せが生き生きと伝わってくるようです。
◆◆◆
この本のことを知ったのは、女優の石田ゆり子さんのエッセイでした。
ゆり子さんのエッセイには、食や雑貨についての話がたくさん出てきます。
その中で、食を大切にしている人は素敵だ、と紹介されていたのが飛田和緒さんだったのです。
生きることは食べること。
たしか、石田ゆり子さんはエッセイの中で「食べることを大切にしている人は、ていねいに生きている」と言うようなことを書いています。
日々、丁寧に生きる。
簡単なようで難しい。
だから、そんな風に暮らしている人の暮らしをちょっとのぞかせてもらって、刺激をもらう。
うらやましさや、憧れとともに、なんだかとても親しみを持って、あっという間に2年を食べつくした感じです。
『晴れた日にはキッチンで』
新しい生活様式のヒントが、たくさん見つかるかもしれません。
【飛田さんを知るきっかけとなった石田ゆり子さんのエッセイの紹介です】
i-am-an-easy-going.hatenablog.com