トリシア・ギルドさんは、イギリスの女性インテリアデザイナーでありインテリアコーディネイターです。
生活は、食べて寝る、の繰り返しではもったいない。
私たちの生きているこの世界は、こんなにも色に溢れている。
高級な家具や調度品をあつらえなくても、いくらでも彩り豊かな生活をおくることはできるのです。
そんなことを、カラフルな写真と共に教えてくれるのが、トリシア・ギルドさんの本。
参考にして模様替えをするのもよし。ただ、ながめて、目の保養にするのも良し、です。
1.ホームスタイリングの全て
「この本は、私のインテリアデザインについての考え方をまとめたものです。(P.9)」とあるように、玄関、リビングルーム、書斎、キッチンやダイニングルーム、ベッドルームなど、家を構成する各部屋ごとに、その部屋の役割と家全体との調和を考えたトリシアさんのデザインが、惜しげもなく紹介されています。
配色や、レイアウトなど、参考にできるところは多い。
手軽に取り入れられそうなのは、ファブリック。
クッションカバーや布張り箱、ベッドカーテンなど、細かい作り方がイラスト入りで紹介されています。
収納庫の奥に眠らせている端切れを引っ張り出してきて、早速、作ってみたくなります。
見ているだけでは勿体ない、楽しくなるような一冊です。
日本では1990年に初版。古い本なので、画像では表紙のイメージが分かりませんが(↑上)、原書(↓下)で使われている美しい写真が日本版でも使われています。
2.住まいのカラー
「私の人生と仕事に深い影響を与えてきたのは、色と、色の可能性です。この本は色へのオマージュです。」冒頭で示されている、トリシア・ギルドさんの言葉。
この本は、インテリアの本と言うより、一冊の画集といったイメージです。
ところどころで引かれている偉大な画家たちの言葉が、違和感なく本書に溶け込んでいます。
たとえば、マティス。
「私の色選びは、(途中略)観察から、感覚から、そして経験という人間のもっとも核心的な特質から色が決まるのだ。」
たとえば、ゴッホ。
「春は、未熟な緑のとうもろこしと、ピンクのリンゴの花。(以下略)」
色には命がある。
色にこだわり、色を愛するということは、この世に生を受けたことを存分に享受していることだと思わずにはいられません。
美しく生命力のある一冊です。
3.色の魔法に魅せられて
以前にも別の記事で紹介したのですが、何より装丁が美しい。
本書は、針金でなく、糸で綴じられています。
糸綴じ(いととじ)とは、書籍などの冊子で、中身となるすべての折丁(印刷した用紙を冊子の大きさに折りたたんだもの)の背の部分を糸でかがって綴じ合わせることをいい、「かがり」ともいいます。
丈夫で、冊子をノドまで開くことができることなどから、折丁を綴じて冊子のかたちにする方法のなかではもっとも本格的なものです。
「糸綴じ」という手法で本書に使われている糸は全部で6色。
黒、青、水色、黄緑、ピンク、紫。
気づいたときの感動と言ったら。
テーマカラーごとにコーディネイトされたアンティークな部屋では、家具やカーテンだけでなく、飾られた花や絵、テーブルの上に置かれた本にまでこだわりを感じます。
決してくすんでいない、カラフルな空間がそこにはありました。
最新の流行を集めたヒンヤリと冷たい部屋もいいですが、写真から見えてくる、古いものへの愛着とともにある日常に、深い豊かさを感じます。
贅沢な一冊です。
【『色の魔法に魅せられて』についての記事です】
i-am-an-easy-going.hatenablog.com
トリシア・ギルドさんについて教えてくれたのは、石田ゆり子さんのエッセイ『天然日和』でした。