迷子の日記。行ったり来たり。

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おばあちゃんのかんころ

初回投稿日:2020/10/24/212258

今週のお題「いも」

 

さつまいもの美味しい季節になりました。「いも」と聞くと、私はすぐに祖母のことを思い出します。

※この記事は、2020年に公開した投稿の改訂版です。

祖母の干し芋

祖母は干し芋*1のことを「かんころ」と呼んでいました。

 

祖母は、母方の伯父のところにいました。
伯父一家は、毎年、お正月は家族旅行に出かけます。
祖母が一人になるので、我が家は、元旦の夕方から三が日を伯父一家のいない伯父の家で過ごしていたのです。

 

お年玉をもらったあとは、基本的にテレビを見る以外はすることがない。

 

主のいない家で、勝手にいとこの部屋へ入ったり、本を読んだり、おもちゃに触るのは気が引けるので、ずいぶんと退屈な思いをしていました。

 

「かんころ食べる?」

そんなとき、決まって祖母が声をかけてくれます。

「食べる!」待ってましたとばかりに私たちは声をそろえて答えます。

一番喜んでいたのは母でした。

 

「もろ蓋が廊下にあるから、好きなのを選んでもっていらっしゃい」そう言われて、親子で寒い廊下に走り出て、一人3~4つくらい、美味しそうに粉の吹いた大きなのを選んで食堂へ直行します。

 

もろ蓋

祖母の言う「もろ蓋」は、ちょうど写真のように、たたみ1畳(は大きすぎかも…)くらいの平たくて浅い木の箱のことです。

 

祖母の手作りの「かんころ」は、もろ蓋に4、5枚はあったでしょうか。

 

「カンコロ」は、サツマイモを一旦、蒸したあと、1センチ幅くらいにスライスして、それからもろ蓋に並べて天日で干して作ります。

 

当時は、考えたこともありませんでしたが、今思えば、ずいぶんな作業量です。

 

石油ストーブ

食堂には、大きな石油ストーブが1台ありました。

私たち親子が、もろ蓋からそれぞれ自分の「かんころ」を選んでいる間に、祖母は石油ストーブにマッチで火をつけて、ストーブの上に金網をのせて待っていてくれます。

 

写真のように丁寧に、それぞれの「かんころ」を並べると、祖母が、次々に絶妙なタイミングでひっくり返して、熱く香ばしく焼き上げては、順番に手渡してくれました。

 

熱々で、ねっとりと甘い「カンコロ」。

食べられなくなって何年も経ちますが、今でもはっきりと覚えている味です。

 

祖母の石焼き芋 

何でも手作り

祖母は、なんでも手作りする人でした。

ある数年、私たちは「本物の」石焼き芋を食べることができていました。

 

「石焼き芋食べる?」にっと笑いながら聞きます。

「食べる!」

「はいっ」と手を上げながら、声をそろえて答えると

「ちょっと待っていなさい」

ザルを持って、あっという間に道路に出ます。

 

共用の道路だったと思うのですが、ぱたぱたと走り出た祖母は、砂利の中から、大きめの石を拾ってはガサッガサッとザルに入れる。

 

食堂の窓から顔をのぞかせて、祖母の様子をうかがっていると、あっという間に食堂に戻ってきます。

 

そのまま、水道に直行し、拾ってきた砂利を洗って、やかんに入れる。

 

 

それから、手際よくサツマイモをやかんに入れて、ガスコンロの火をつける。

 

…サツマイモはアルミホイルで包んでいたような気もするのですが、そのままだったかもしれません。

 

「できたよ」と渡されたお芋の美味しかったことと言ったら。

 

「わぁ、お店のお芋!」きゃっきゃと叫びながら、夢のように甘い焼き芋を妹と一緒に頬張りました。

 

普段、うちでは蒸(ふか)したお芋しか食べないので、当時高級品だった焼き芋は、あこがれだったのです。

 

あとで従妹から聞いたのですが、焼き芋に使っていたやかんは、お湯を沸かすつもりが空焚きしてしまい穴があいてしまったのだそう。

 

捨てる前に一度、と思い、穴を埋めるのに石(道路の!)を敷いて、火にかけたら、思いのほか美味しい焼き芋ができたので、孫にも食べさせようと思ってくれたのです。

 

従妹に言わせると「おばあちゃんは、アイデアマン」だったらしい。

 

最近、母がよく自分の子供の頃の話をします。

 

祖母は何でも手作りしていたのだそうです。

梅干し、紅ショウガ、かき餅…私たち孫が口にすることがなかったものもたくさんあります。

 

聞いていると、どんな高級品より贅沢に思えてくるのは、きっと祖母の「かんころ」と「焼き芋」の味を知っているからです。

 

 

過去記事>>人生最後に食べたいもの - 迷子の日記。行ったり来たり。

 

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*1:サツマイモを切干ししたもの。