初回投稿日:2021/04/24 最終更新日:2023/09/24
今週のお題「お弁当」
朝めざめたら一番にパソコンの電源を入れる。
いつものように普通に立ち上がることを確認してから、部屋中のカーテンを開ける。
布団を上げ、窓を開けて外の空気を吸い込む。
今日がはじまる。
まずは、洗面所で軽くうがいをして、台所に入ったけれどあまり食欲がありません。
冷蔵庫から炭酸水を取り出して部屋に戻ります。
近所のドラッグストアで買ったプライベートブランドの強炭酸は美味しいとは言えないけれど、目覚ましにはピッタリです。
ごそごそと服を着替えながら、なかなかログインできないパソコンをみて「出かけている場合じゃないな」と思います。
明日には新しいパソコンが届きますが、設定に手間取る可能性があるので、今日は書けるだけ原稿を書いておいた方がよさそうです。
ユニクロで買ったスエットの上下を選んで袖をとおしていると、急に空腹を感じます。
それでサンドイッチが食べたくなったので、もういちど台所に戻って写真のサンドイッチを作ったのです。
すでに朝食を済ませていた母に声をかけると、「四分の一ちょうだい」というのでサンドイッチを四つに切って一切れ渡しました。
今日もしっかり食欲がある母をみて安堵します。
サンドイッチには、先日、母の友人からいただいた家庭菜園のレタスとパックに入ったハムとプロセスチーズとマヨネーズを使いました。
コーヒーの粉を切らしたのでインスタントコーヒーを淹れます。
インスタントコーヒーは酸味がきつくて苦手なので、必ず牛乳を加えてカフェオレにするのだけれど、生憎、牛乳も切らしている。
冷凍庫を開けると、母のお気に入りの棒付きバニラの箱アイスがあります。
1本もらって、コーヒーカップにドボンと入れる。
少しするとアイスが溶けて、簡単にカフェラテのできあがりです。
泡の加減も甘さもちょうどよい。
これにシナモンを加えると、さらにそれらしくなることには、最近気づきました。
高校生の頃、そう言えば、わたしはお弁当が食べきれずいつも中身の入ったお弁当箱を持ち帰っていたなあ。
サンドイッチを食べながら、唐突にそんなことを思い出しました。
「食べきれず」、というのは嘘です。
周りの女子生徒のお弁当は可愛くてとてもオシャレでした。
お弁当箱はキャラクターものもあれば、カラフルな幾何学模様もあったし、カトラリーはお弁当箱とおそろいのフォークやスプーン。
中身はフレンチトーストやサンドイッチにイチゴやメロン、なかにはマンゴーのような我が家では見慣れないフルーツがきれいに並んでいた。
お弁当を入れているのも専用の巾着袋で、グループでお揃いにしていたりしていました。
私はというと、景品らしいお弁当のフタには大きく商品名が入っていて、おはしも箸箱もちぐはぐだったと思います。
お弁当箱入れは途中から、お小遣いで買った巾着袋になったのだけれど、それまでは布巾で包んでいました。
可愛らしいイラストではあったけれど、やっぱり何かの景品で「何とかハム」とか「何とかセッケン」とか商品名が大きく入っていました。
肝心の中身の定番は、メインがホタテのフライか野菜コロッケ。
冷凍食品で、一度「おいしかった」と言ったら、毎日毎日そればっかりが入っていました。
それに、プチトマトが3つと金時豆の甘く煮たのが10粒くらい。
この金時豆の甘煮は、スーパーでパックで売られていたものですが、正確には金時豆だけではなくて、白い豆と赤い豆と緑の豆が入っていました。
甘煮は、ただ入っているだけではありませんでした。
3つだか5つだか忘れたけれど、つまようじに丁寧に配色を違えて刺したものが2、3本入っているのです。
「きゃぁっ。SAWAのお母さんてマメねぇ!みんなみて、みて、この豆!」
友人の無邪気な声に数人のクラスメートが集まってきて
「ホント、ホント!カワイイ!」
言いながらゲラゲラ笑うものだから、次の日からお弁当が食べられなくなってしまいました。
些細なことがおかしくて仕方なかった年頃は、自意識も過剰になるころです。
私が特別だったわけではなく、私のような学生もたくさんいました。
なのに、毎朝母が作ってくれるお弁当が恥ずかしくなってしまったのです。
無邪気な母は、毎日「はい。お弁当。今日もいっぱい愛情を入れたからね」と言って渡してくれました。
そんな母に申し訳ないので、隣のミソ君に残ったお弁当をあげて、お弁当箱を空にしてから家に入っていました。
ミソ君は、隣の家のワンちゃんで、12月31日に飼い始めたので「おおみそか」からとって名付けられたそうです。
ミソ君と私だけのお弁当の秘密は、母にもお隣さんにもしっかりバレていました。
結局、私は「子どものためにお弁当を作る」という経験をしない人生を歩いてしまいました。
だからきっと、余計に、ミソ君と私だけのお弁当の秘密はいまだに少しだけ、チクッと胸に刺さるのでしょう。
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