初回投稿日:2021/06/04 最終更新日:2023/09/26
今週のお題「そうめん」
「らっきょう酢」というのは、合わせ酢の一種で、文字通り「らっきょう」を漬けるのに使いますが、そのほかの料理にも使える万能酢です。
亡くなった父は、スーパーで買う袋らっきょうに使われているお酢が好きでした。
ある日、母に、そうめんが食べたいと言った後、「らっきょうの酢に醤油を少し垂らしてくれないか」と言います。
母だけでなく、娘たちも「らっきょうのお酢」は捨てるものだと思っていたものですから、「またお父さんったら、変なこと言いだして」と少し鬱陶しく聞いていました。
言われたとおり、らっきょう酢にお醤油を少し入れたつけ汁と、茹で上がったそうめんに氷を添えて、父の前に置きます。
薬味はいらない、一味唐辛子がほしい、と言うのでそれも準備する。
「ああ、やっぱり。美味しい。思ったとおりだ」満足そうにすする様子はなんだか子どものようでした。
最初こそ訝しげに見ていましたが、「食べてみるか?」と言われて一口もらうとこれが本当に美味しい。
真夏の暑さに落ちていた食欲がうそのように、いくらでもするすると冷たいそうめんがのどを通っていくのです。
何よりつけダレの甘酸っぱさが、疲れた胃にちょうど良い。
母は、そそくさと立ち上がり追加の麺を茹でる。
「一味もいいけど、鷹の爪のほうが合うわねえ」と、鷹の爪入りのつけダレを今度は全員分用意して、結局、家族全員でらっきょう酢そうめんを食べました。
いつからか我が家の夏の定番となった、らっきょう酢そうめんは、作るたび必ず父を思い出すそうめんです。
今年もそろそろシーズンです。