迷子の日記。行ったり来たり。

本当に本当に本人以外にはどうでもいいようなことをつらつらと書き連ねています。このブログにはアフィリエイト広告を使っています。

忘却図書館

 

📖忘却図書館

その図書館は、町外れの丘の上にひっそりと建っていた。地図にも載っておらず、案内板もない。けれど、忘れたいことがある人だけが、なぜか辿り着けるという。
ある雨の日、大学生の遥はその図書館に迷い込んだ。傘も差さず、ただ歩いていたら、気づけば重厚な木の扉の前に立っていた。
「こんにちは」
中に入ると、老司書が静かに迎えた。館内は薄暗く、天井まで届く本棚が並んでいる。だが、どの背表紙にもタイトルはない。
「ここは“忘却の図書館”。あなたが忘れたい記憶を、本にして収める場所です」
遥は戸惑った。忘れたい記憶など、特にないと思っていた。だが、司書が差し出した一冊の本を手に取ると、指先が震えた。
ページをめくると、幼い頃の記憶が蘇る。母親に怒鳴られ、泣きながら押し入れに閉じこもった夜。誰にも話したことのない、心の奥底に沈めた記憶だった。
「この本を棚に戻せば、その記憶は消えます。ただし、二度と取り戻すことはできません」
遥は本を見つめた。忘れたいと思った瞬間もあった。でも、今はそれが自分を形作っている気がした。
「持ち帰ることはできますか?」
司書は微笑んだ。「もちろん。ただし、持ち帰った記憶は、より鮮明になりますよ」
遥は本を抱きしめ、図書館を後にした。雨は止み、空には虹がかかっていた。
それから遥は、時折その本を読み返すようになった。忘れたいと思っていた記憶が、少しずつ優しさに変わっていった。
そして数年後、遥は自分の子どもを連れて、あの丘を訪れた。図書館は、そこにあった。変わらず静かに、誰かの記憶を待っていた。

 

📘 令和出版のご案内

心に残る瞬間や想いを、かたちにして届けたい――そんな想いを持つ方へ。
令和出版では、商業出版のハードルが高く感じる方や、自費出版のリスクに不安を抱える方に向けて、「協業出版」という新しい選択肢を提案しています。
エッセイや短編、専門性の高い小ロットの書籍など、個人の創作を丁寧に支援する仕組みです。

🔗 詳しくは 令和出版HP をご覧ください。

📝 令和出版については、以下の記事でも紹介しています:【PR】令和出版で叶える“本づくり”──低コスト&ブランディング支援付き出版サービス - 迷子の日記。行ったり来たり。

 

【過去のショートショート】

  1. 生成AIと書いたショートショート:鏡の向こうにいた“もう一人の私” - 迷子の日記。行ったり来たり。
  2. 生成AIで創作したショートショート|魔法使いの謝罪魔法と人間力の物語 - 迷子の日記。行ったり来たり。