📬【ショートショート】未来からの手紙
朝、ポストに奇妙な封筒が届いていた。差出人の欄には「2035年のあなたより」とある。
冗談かと思いながらも、封を切ると中には一枚の便箋が入っていた。
拝啓、2025年の私へ。
君は今、何に悩んでいるだろうか。仕事?恋愛?それとも将来の不安?
どれも大したことじゃない。10年後の君は、今の悩みを笑っている。
でも、ひとつだけ忠告しておきたい。
あの3月の夜、駅前の小さなバーに行くのをやめないでほしい。
そこで出会う人が、君の人生を大きく変える。
その人の言葉が、君の眠っていた夢を呼び起こす。
そして君は、ようやく「自分の物語」を歩き始めることになる。
だから、どんなに疲れていても、その夜は外に出て。
未来の君が、君を待っている。
手紙はそれだけだった。
3月の夜。駅前のバー。そんな予定はなかったはずだ。だが、なぜかその日が近づくにつれ、心がざわついた。
そして迎えたその夜、僕はバーの扉を開けた。
カウンターに座ると、隣にいた女性が微笑んだ。
「初めてですか?」
その声に、どこか懐かしさを感じた。まるで、ずっと前に夢で聞いたような。
「ええ、なんとなく来てみたくなって」
「なんとなく、って案外大事ですよ。人生の分岐点って、そんな“なんとなく”から始まることが多いんです」
彼女の言葉に、手紙の一節が重なった。
“その人の言葉が、君の眠っていた夢を呼び起こす。”
「あなた、何かやりたいことがあるんじゃないですか?」
不意に聞かれて、言葉に詰まった。ずっと心の奥にしまっていた夢。小説家になりたいという、子どもの頃の願い。
「……昔、小説を書いてました。でも、今はただの会社員です」
「それ、やめたんですか?それとも、止まってるだけ?」
彼女の問いに、胸がざわついた。
「止まっているだけ、かもしれません」
「なら、また始めればいい。止まってる時計は、針を動かせばまた時を刻むんです」
その夜、僕は帰宅して、埃をかぶったノートパソコンを開いた。カーソルが点滅する画面の前で、指が震えた。でも、彼女の言葉が背中を押してくれた。
最初の一文を書いた瞬間、心の中で何かが動き出した。
それから10年後、僕は作家としてデビューした。
そして、ある日ファンレターの中に、見覚えのある筆跡の手紙があった。
拝啓、2035年のあなたへ。
あの夜、バーに行ってくれてありがとう。
あなたの物語は、あの瞬間から始まった。
これからも、書き続けてください。
未来は、いつも君の手の中にある。
僕は微笑んだ。
未来からの手紙は、過去の自分への贈り物だった。
※本文中の引用符は、演出上の使用で、実際に典拠があるものではありません。
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止まっていた夢に、もう一度手を伸ばしてみませんか。
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