迷子の日記。行ったり来たり。

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【ショートショート】「らしさ警察」

らしさ警察

「その歩き方、男らしすぎますね。注意です」
駅の改札を出た瞬間、男は肩を叩かれた。振り返ると、灰色の制服を着た人物が立っていた。胸元には「Gender-Free Enforcement Bureau」と書かれたバッジ。
「え?歩き方?」
「ええ。腕を大きく振って、足を広げて歩くのは“男らしさ”の表現とみなされます。公共空間では控えてください」
男は呆然としながらも、うなずいた。周囲の目が気になる。誰かがスマホを向けている気がした。
それからというもの、彼は歩き方を変えた。足を揃え、腕を小さく振る。だが、今度は別の警告が来た。
「その仕草、女らしすぎますね。注意です」
彼は混乱した。
「じゃあ、どう歩けばいいんですか?」
「“らしさ”を感じさせないように。中性的に。ニュートラルに」


会社でも、同僚が“らしさ警察”に注意されたという話が絶えなかった。
「昼休みにサラダばかり食べてたら“女らしい”って言われたよ」
「俺なんて、会議で声を張ったら“男らしい”って注意された」
誰もが怯えていた。言葉、服装、表情、趣味。すべてが監視対象だった。


ある日、男は意を決して“らしさ警察”の本部に乗り込んだ。
「質問があります。“らしさ”って誰が決めてるんですか?」
受付の女性は無表情で答えた。
「世論です。SNSの反応、アンケート、トレンド分析に基づいています」
「じゃあ、世論が“男らしい涙”を称賛したら、それはOKになる?」
「一時的には。ですが、翌週には“感情を見せる男は女々しい”という意見が増えれば、またNGになります」
男は笑った。
「つまり、“らしさ”は流動的で、誰も正解を知らない。でも、それを取り締まってる」
「はい。社会の安心のためです」


男は帰り道、わざと腕を大きく振って歩いた。誰かに注意されるかと思ったが、誰も何も言わなかった。
その夜、彼はSNSにこう書いた。
「“らしさ”を気にすることこそ、最も“らしくない”行為だと思う」

 

翌朝、彼のアカウントは凍結されていた。

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