群さんの本は、ときどき無性に読みたくなります。私の2026年のお正月は『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』とともに始まりました。
ご存じの方も多いかもしれませんが、群ようこさんは、あの『かもめ食堂』(映画)の原作者でもあります。映画も素敵ですが、小説にはまた別の味わいがあります。ちなみに「かもめ食堂」が、実は宝くじの当選金を資金にオープンしたという設定には驚かされました。
本書『優しい言葉 パンとスープとネコ日和』は、現在 Amazon プライムビデオでも配信されているドラマ『パンとスープとネコ日和』の続編(後日譚)にあたります。ドラマの原作は1作目『パンとスープとネコ日和』で、2作目が『福も来た パンとスープとネコ日和』、その続編が本書です。
群さんの小説のどこがこんなに好きなのだろうと考えると、「その世界に自然と入り込めること」なのだと思います。主人公の寂しさや不安、ふとした幸福感。気まずい瞬間に小学生の頃の記憶がよみがえる感じや、信頼している相手だからこそ、他愛もない言葉なのに言えずに飲み込んでしまう感じ。そうした細やかな描写が自分事に重なり、ときにくすぐったいような、ときにチクリと痛むような気持になりながら、すうっと物語に引き込まれてしまうのです。どこで本を閉じても、再び開けばすぐにその世界の住人に戻れる――それが群さんの作品の魅力だと思います。
最近、私はよく「母がいなくなった後のこと」を考えます。
介護中心の今の生活は大変ですが、いざ母がいなくなったら、私はちゃんと立っていられるだろうか。一人の時間は果てしなく思えて、ときには「あれもしたい、これもしたい」と夢想することもあるのに、実際に思い浮かぶのは孤独に苛まれている自分ばかりです。
けれど、群さんの小説を読んでいると、そんな不安がゆっくりと薄らいでいきます。
「一人の時間も、きっと大丈夫」
そう思わせてくれる優しさが、この本にはあります。読み終えたあと、私も猫といっしょに暮らしたいと心から思いました。