やっぱり、美味しそうにないですよね…(-"-)。言うほど不味くはなかったのですが。
どうして、こんなスープを作ったかと言うと。
幼なじみと再会しまして。
数日前に母から連絡があって、小学校の同級生が漫画家になっていて、地元で合同展を開くらしい。新聞に載っている。ということです。
懐かしくてたまらなくなりました。小学校、中学校と同級生で小学校の頃はよくお互いの家を行き来していました。
新聞社のサイトをチェックすると、紙面掲載の内容が出てきました。なのに、写真に写る人が彼女かどうか自信がない。ああ、会わなくなってそんなに時間が経ってしまったのだなあと一人しみじみ思います。
それでも、何度も見ていると、幼いころの面影があります。きっと彼女だ。活躍しているのだと思うとうれしくて仕方ありません。
その夜、彼女が夢に出てきたほどです。
なぜ、あんなに仲良しだったのに疎遠になったのかどうしても思い出せませんが、中学3年でクラスが別れてから交流がなかったと思うので、受験がきっかけだったかもしれません。
高校は、互いに別々の進学校に入学し、以降のことは分かりません。ただ、それまで一度もけんかをしたことはありませんでした。
二人とも気管支が弱く、小学生の頃はよく風邪を引いていました。寒い冬の日に体育の授業を一緒にサボったことがあります。そそのかしたのは私だったかな。
翌日、勇んで展覧会に出かけましたが、残念ながら彼女は不在。会場にいた係りの方に彼女の来場日を教えていただき、私の名前と住所、連絡先を残して帰りました。
彼女に会えるまで2日待たなければならなかったのですが、その間、彼女から連絡をもらうことはありませんでした。私は少しだけ期待していたのですけれど。
伺っていた時刻が夕方だったので、久しぶり食事に行くことになるかもしれないと、なけなしの生活費を取り出して、わずかになってしまった冬服の中から、それでも何とか再会のためのワンピースとカーディガンとバッグと靴を選びました。
当日、約束の時刻を待ちわびて、はやる気持ちで出かけたのです。
階段を上って会場に入ると、彼女がいました。バッグの中を整理しているようで、入り口の私には気づきません。
いきなり当時の愛称で呼ぶのが何となくためらわれたので、名字で呼びかけてみました。彼女は「ああ」と短く反応して「ゆっくり見ていって」と言ってくれただけでした。
私は会えるまでの時間に勝手にいろんな想像をしていました。
独立してがんばっている彼女に私の近況を話す。LINEの交換はするだろう。お互いに独身。きっとこれから二人の関係はにぎやかになるはず。
彼女の色んな話を聞いて私もがんばるのだ。遠くない将来、何か一緒に仕事ができたらどんなにか素敵だろう。
能天気。どれだけ長い間、別々の時間を過ごしてきたのか、思い知る気持ちです。
それでも、何とか話しかけて会話を継続しようとしましたが、彼女は目を合わせてくれません。会期最終日であったので、撤収作業について独り言のように呟きながら、バタバタと忙しなく会場を出たり入ったりして。
他のスタッフの方が私を気遣ってくれているのが分かります。それでも、私はその場を離れないで、彼女が会場に戻ってくるのを待ち、少しずつ彼女の生活を聞いていました。
彼女は私の近況も今までのこともなんにも聞いてはくれなかったけれど。
もう、帰った方がいいかな、と思ったときにふと、今回のイベントを知ったきっかけについて彼女に伝えました。母が新聞で記事を見つけたこと。彼女のことをとっても懐かしがっていること。
「がんばってね。私も色々あるけどがんばってるから。お母様にもよろしくお伝えください。」
それじゃあ、と周りのスタッフの方々にもご挨拶をして会場を出ようとしたら、彼女が私の腕をとって階段のところへひっぱります。
「うちの母とあなたのお母さんがどんな付き合いだったかは知らないけれど、母はもう5年前に亡くなっているので、それだけ伝えておいてもらえないかな。」
母からは、彼女のお父様が2年前に亡くなったことだけ聞いていました。ああ、彼女は本当に一人で頑張っていたのです。長い時間、一人で。
母の友人の娘さんが漫画家だそうです。名前は恥ずかしいから言わないで、と口止めされているとかで、母も私も知りません。
その人は、売れっ子らしく、マンションを2つ持っていて、一つを作業場にして繁忙期にはアシスタントの方が泊まり込んでいる。ヨーロッパでも人気らしく、パリにご招待されたこともあるらしい。
けれど、友人の生活は、そんなきらびやかな世界とは全く縁がなさそうでした。「私たちの生活は"地下"だから。普段は世間から隔絶された世界でみなそれぞれやってるの」と彼女は言っていました。
次の約束もないまま、手を振って別れ、秋晴れのさわやかな道を街路樹を眺めながら帰りました。晴天がかえって寂しい。
冷蔵庫に何もないな、と思ったのですが、スーパーにもコンビニにも立ち寄る気になれず、そのまま家に帰りました。
食欲はありませんでしたが、何か口に入れないと、と思い、わずかに残っていたレタスとコンソメキューブとケチャップで作ったのが写真のスープです。
母になんて言おうと思いながらスープを啜っていたら、母から電話がありました。
彼女のお母様が5年前になくなられていたことを話すと、電話口で母がすすり泣きます。20年くらい前に、彼女は家族で私の実家と同じ町内に引っ越してきていたそうです。
右も左も分からない町内で、彼女のお母様が母に連絡をしてきて、町内の集まりなどに何度かご一緒していたらしい。
どちらの娘もなかなか嫁にいかず、彼女のお母様は、それをご主人から「お前が甘やかしたせいだ」と言われて辛がっていたそうです。
2年前、彼女のお父様がなくなったことを知って、母は彼女のお母様を案じて自宅を訪ねたり、電話をかけたりしたらしい。
電話にメッセージを残しても、一向に連絡はなく、気になりながらも、事情があるのだろうとそのままになっていたという話でした。
それが、彼女のお父様が亡くなるよりも前に、お母様が亡くなっていた。彼女は母の留守電を聞いたはずです。
母に連絡をくれなかった彼女。そして、私は今いるマンションの住所を伝えただけで、私も一人だとは伝えていない。
彼女の心の深いところは分かりません。
けれど、私は、もしまたいつか、彼女のイベントがあったら出かけようと思います。
記事のタイトルに「やけっぱち」としたのは、イベントから帰ってすぐのことでした。特に腹を立てたり、不愉快に感じたりしたわけではありません。
ただ、丁寧に生きてきたつもりでも、今自分にあるのは孤独と不安だけな気がして、いたたまれないような気持ちを言い表す言葉が見つからなかったのです。
・・・今も見つからないので、タイトルは今日はこのままで。。。
※最近、私は、写真素材ダウンロードサイト【写真AC】を利用しています。制限はあるものの、無料で良質な写真を使わせていただけるので重宝しています。イラストもあります。