癒しのファイヤーキングたち
初回投稿日:2019/11/18
写真のファイヤーキングは7年くらい前に買ったものです。
ファイヤーキングはアメリカの耐熱ガラスメーカー、アンカーホッキング社のブランドの1つで、1940年代から70年代まで製造されていました。
アンカーホッキング社自体は、現在も商品を販売しています。
ファイヤーキングのファンになったきっかけは、「今度は愛妻家」の映画でした。
たくさんのシーンでファイヤーキングのマグカップが印象的に使われていて、中でも薬師丸ひろ子さんが使うチェリーブロッサムのマグカップに特に惹かれました。
ファイヤーキングのマグカップにはコーヒーが似合います。
ミルクガラス*1が唇に触れたときの、ぽってりとした厚みとヒンヤリとした感触がえも言われないのです。
立て続けに買ったのが、写真中央の真っ白のDハンドルマグと写真左のジェダイのカップ&ソーサ―です。
ジェダイのカップ&ソーサーは薄手で、コーヒーよりも紅茶が飲みたくなります。
可愛らしいデザインだけでなく、薄くてもしっかりとした作りで扱いやすいのも魅力です。
ジェダイとは翡翠色のことで、ファイヤーキングのシンボルカラーといえるほど代表的な色です。
紅茶をカップに注ぐと翡翠色に薄茶色が透けて見えるのが本当に美しく、ゆっくりと時間をかけて味わいたいと思います。
当時はまだ円高で、比較的リーズナブルに状態の良いカップが手に入りました。
立て続けに購入したからか、購入店から「もう一品購入したらジェダイのスタッキングマグをプレゼント!」というお手紙をいただいたのですが、一人暮らしにカップばかりが増えても、と踏みとどまったことは、今となっては悔やまれます。
◆◆◆
私がファイヤーキングを知ったのは、知人の新居へ招かれたときでした。
彼女は多分時代の先端を行っていた人です。
新居に選んだのは中古物件。
内覧時には所有者はまだ住んでいて、パジャマのままリビングで横になってテレビを観ていたそうです。
アメリカンテイストで統一された家具はほとんどがアンティークで、台所のシンク部分の収納だけは家具に合わせて特注で新調したということでした。
もう20年以上前になりますが、当時、私は鍋やフライパンの収納部分が引き出し式になっているのをまだ見たことがありませんでした。
ご自慢の食器棚には、カラフルで分厚いファイヤーキングのマグカップがずらりと並んでいます。
5,6人で押し掛けたのですが、全員それぞれ色の違うファイヤーキングにコーヒーを注いでくれました。
「すごいねえ」一人が言います。
「がんばったのよ。高いから毎月一つづつしか買えないでしょ」
そのとき恥ずかしげもなく私は聞いてしまったのです。
「でも、これ、誰かが使っていたものなんでしょ?」
「アンティークだからね」愛おしそうにカップを撫でながら答える彼女が不思議でなりませんでした。
「これこれ、これがとっておき。やっと届いたのよ」と見せてくれたのは数枚の端切れです。
1枚が5㎝もあったでしょうか?
とにかく小さくて、枚数も少ないので、パッチワークにしても何も作れそうにありません。
無粋な私は、わざわざアメリカから取り寄せたという端切れを見て「これをわざわざ取り寄せたの?」と聞いてしまいました。
今のように簡単にネットで海外の品物が手に入る時代ではなかったので、輸入にかかる代金も含めて手間もお金もかなりかかると言う話でした。
ボタンもありました。
一つづつ全部違う種類です。
「何にするの?」と聞いたら
「ずっと眺めてる」という彼女が当時の私には不思議でなりませんでしたが、好きなものに囲まれている彼女はことのほか満足気で幸せそうでした。
あれから10年以上たって、ようやく私にもアンティークの良さや彼女のセンスがわかるようになった気がします。
◆◆◆
2011年からは、日本がアンカーホッキング社と連携し、ファイヤーキングジャパンとしてミルクガラスを復刻しています。
職人が一つ一つ手作りしている日本のファイヤーキングは品質はもとより、ビンテージ品よりも種類が豊富で価格も安定しているので人気です。
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*1:乳白色の耐熱性のガラスのこと。ファイヤーキングでは、さまざまな着色やカラフルなイラストで多彩な食器が作られています。