迷子の日記。行ったり来たり。

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『旅路』(藤井風)の歌詞が沁みる…”みんな同じ”の意味するところ

初回投稿日:2023/09/02/000240

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CONTENTS

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『旅路』について

藤井風さんの『旅路』は、2022年にリリースされたアルバム『LOVE ALL SERVE ALL』に収録されている曲です。

テレビドラマの主題歌として採用されているので、ドラマでご存じの方もいらっしゃるでしょう。

 

彼の楽曲はメロディーやご本人のピアノ演奏はもちろん、歌詞…詩も奥深く、惹きつけられます。

 

なかでも『旅路』の一節は、初めて聴いたときから胸に刻まれ、何かあるたび救ってくれるのです。

 

今日の日記

今日は、母の眼科の受診日でした。

月初めの金曜日はいつにも増して患者が多い。

わたしたちの席の前には高齢のご夫婦が座っていらっしゃいました。

奥様が旦那様に「お茶飲む?」と話しかけると

旦那様が「は?」と言う。耳が遠いらしい。

「お茶」またも言うと

「トイレか?さっき行った」

奥様がバッグからお茶を取り出して

「お茶」と言うと

「ああ、いらん」

 

目の前でのやり取りに、つい笑いそうになる。

我が家でも同じようなやりとりを毎日繰り返しているから。

そして、知らん顔している母を見て、ちょっぴり安堵します。

聞こえていない。

もし聞こえていたら、声を上げて笑ってしまったかもしれないのです。

冷や冷やさせられることが多くなりました。

 

待合のそばの処置室には、高齢の男性が入っていました。

「毎日、きれいに洗ってもらってるの?」

看護師さんの声が聞こえます。

耳が遠いのでしょう。どうしても、話しかける声が大きくなる。

「いえ、僕が自分で洗ってます」

男性の返事を聞いた途端、隣に座っていた男性が立ち上がって扉まで駈け寄っていかれます。

トントンと処置室のドアを叩きますが、会話が止まることはありません。

次に

「じゃあ、履き替えましょうね」

看護師さんの声が聞こえました。

男性は慌てた様子で自分の荷物のところまで戻り、紙パンツを持って再びドアを叩く。

看護師さんが顔を出し、二言三言ことばを交わして戻っていかれました。

 

「今は一人で暮らしてるん?」

看護師さんの問いに

「ああ、一人暮らしです。僕が全部一人でしています」

丁寧に答えていらっしゃいます。

 

暫くして、看護師さんが息子さんらしき男性に現状を確認なさっていました。

男性は、無事お父様のケアハウスの入居が決まり、現在はお試し期間で宿泊している状況で、それまでの面倒は息子さんが見ていらしたと伝えています。

 

身に詰まるような思いのまま、やりとりのそばにいました。

 

母も大切なことは忘れてしまうかもしれません。

今でもときどき錯誤が見られます。

不安や寂しさや腹立たしさなど、やるせない思いにつぶされそうになることが増えてきました。

 

沁みる一節

『旅路』の中でもとくに心に沁みる一節があります。

この宇宙が教室なら 隣同士 学びは続く

生まれたばかりの子どもも、80歳を超えた高齢者も、この時代に生を受けているものすべてが同級生。

みんな、命尽きるまで学び続ける。

 

苦手なあの人も、言葉を交わしたことのないあの人も、みんなクラスメイト。

正しさを求めても仕方がない。

大嫌いなあの人がしたことも、学びの途中のちょっとした間違い。

誰も正解じゃない。

 

間違いを恐れることも、間違いを責めることも、意味がない。

みんな学びの途中なのだから。

 

ありとあらゆる人間関係に、ともすれば恐れと煩わしさを感じてしまう私にとって、『旅路』の歌詞は癒しであり救いでもあります。

 

『旅路』と『帰ろう』は地続きの楽曲

「間違えた人を責めたり恨んだりするのではなく、すべて忘れてしまおう。」

こう歌っているのは、2020年に発表された『帰ろう』です。

『帰ろう』では

憎み合いの果てになにが生まれるの わたし わたしが先に忘れよう

と書かれています。

人間関係に振り回される私には、重く深く刺さる一節です。

この一節を実現するために、長い学びの『旅路』があるのでしょう。

 

生きている限り「みんな同じ」

『旅路』のなかに

このまちは 相変わらず青春です

と歌われているところがあります。

「まち」には老若男女、さまざまな人々が生活しています。

すべての方が日々、懸命に生きている。

その様子を「青春」だと歌っている。

 

青春は人生のごく一部、一瞬を指すのではなくて、一生懸命に生き抜くすべての人の時間のことだと言っているようです。

みんな同じ、先の分からない時間を手探りで生きている。

それは、希望であり不安であるけれど、それぞれの手に触れたすべての事柄に意味がある。

 

胸の奥から湧き上がるような怒りや不安に襲われたとき、『旅路』はそっと降りてきて「彼も人なり」と教えてくれるのです。