迷子の日記。行ったり来たり。

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【本の紹介】『The CHRISTMAS SWEATER クリスマス・セーター』by グレン・ベック(西本かおる 訳)

初回投稿日:2023/12/01/000000

作者のグレン・ベックはアメリカのキャスターで、CNNヘッドラインニュースのアンカーを務めたこともある人です。

『クリスマス・セーター』は彼の実話に基づく物語です。

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主人公のエディは、貧しいパン屋の一人息子として生まれます。

誠実で腕のいい父親は貧しい人にやさしく、働けど働けど暮らしは一向に楽になりません。

ついには病に倒れ、亡くなってしまいます。

エディが8歳のときでした。

母親は働き者でしたが、父親のあとを受け継いでパン屋をするほど上手くはパンが焼けません。

泣く泣く店を手放して、仕事を掛け持ちしながら息子を育てます。

 

エディの家では、父親が元気なときから貧しいながらもワクワクするようなクリスマスを過ごしていました。

祖父母を交え、互いが喜びそうなプレゼントを準備してクリスマスがくるのを待つのです。

 

12歳になったエディは自転車が欲しいと願うようになります。

残念ながら、クリスマスプレゼントに自転車が登場することはありません。

13歳になったエディは、ついに爆発してしまいます。

今年こそはと恋焦がれたクリスマスプレゼントが、自転車ではなく母親の手編みのセーターだったからです。

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子どものころは「取り返しのつかないことなんてない」と思っていました。

子どもの頃の失敗は大人になれば全部笑い話になると信じていたのです。

なんて愚かな勘違いなのだと、笑い話になることなどほとんどないのだと身をもって知るのは、もうやり直しがきかなくなった年齢になる頃です。

 

エディもそうでした。

自転車の代わりに手編みのセーターを手にして、生まれてから今日までの自分のがまんと生活のみじめさに、神様をも呪ってしまいます。

働きづめの母親が息子のためにと一生懸命編んだセーターを床に投げつけても、怒りが収まることはありません。

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子どもを無垢だと言うのは、子ども時代をすっかり忘れ果てた大人だけです。

「そんなつもりじゃない」

「そこまで言うつもりじゃなかった」

頭ではわかっているのに、口を突いて出る暴力的な言葉や態度に、自分自身深く傷つきながらも止めることができない。

この痛みをどうやって乗り切るのか、あの言葉やあの態度が出てくるの前の時間にどうやったら戻れるのか。

 

セーターを投げつけてから、エディの長い長い旅が始まります。

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クリスマスの物語の主人公は、なぜか貧しい家庭の子どもが多い。

同じような経験をした人も、温かいクリスマスの思い出だけの人も、エディの中にきっと過去の自分を見つけるのではないでしょうか。

クリスマスの季節が来るたびに、読みたくなる一冊です。