【本の紹介】『木曜殺人クラブ 逸れた銃弾』by リチャード・オスマン
初回投稿日:2023/09/19
主人公は、エリザベス・ジョイス・ロン・イブラヒムの4人の老人。
「木曜殺人クラブ」は彼ら4人がメンバーとなる探偵クラブです。
「クラブ」とはいえメンバーの経歴は華やかです。(以下、F:女性、M:男性)
エリザベス(F)は元諜報員。
ジョイス(F)は元看護師。
ロン(M)は元労働運動家。
イブラヒム(M)は元精神科医。
その力量にはかなり期待できます。
彼らのターゲットは未解決殺人事件。
週に一度、木曜日に集まって古い警察の未解決事件ファイルを調べて解決できそうな事件を選ぶ。
今回選んだのは、ニュース番組の女性リポーターの失踪事件。
失踪とはいえ、彼女の車は崖から転落している。
一見すると事故か自殺に思えるが、死体は見つかっていない。
当時、彼女が密かに追っていたのは世間を騒がせていた詐欺事件だった。
状況から一旦は彼女は殺害されているとして捜査されたが、新しい情報が得られないまま未解決事件として閉じられています。
エリザベスたちは、メインキャスターのマイクに近づきます。
有名人に会えるとあって、浮足立つ様は面白い。
ここで、良くあるエンターテインメントミステリーと決めつけるのはもったいない。
縦糸は女性リポーター失踪事件ですが、横糸には木曜殺人クラブメンバーそれぞれが抱えるトラブルや問題が絡んできます。
トラブルや問題は新たな事件となって、物語を複雑にしていくのです。
ミステリーを最後まで読む作業は、絡まった糸をほどいていくのに似ています。
最後まで読んだ人だけが見ることのできる景色。
爽快です。
『木曜殺人クラブ』はシリーズ化されており、本書はその第3作目になります。
老人探偵ものはテレビドラマでもありますが、この小説の面白さは、高齢者が抱える切実な現実をきちんと描いているところにもあります。
今作では華やかなテレビ業界が舞台ながらも、エリザベスが夫の認知症と向き合うシーンにつまされる思いです。
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猛暑が続いていますが、暦の上では秋です。
秋の夜長を過ごすのは、ミステリーをお供にするのがおすすめです。