母が乗り慣れた自転車に乗りづらくなったのは、去年の夏でした。
すぐに近所の自転車屋に新しいものを探しにでかけましたが、取り寄せに2、3週間かかると言うので、やむなく近所のホームセンターで急場しのぎの新車を購入したのです。
ペダルは購入後に取り付けることになっていて試乗はできません。
仕方なく、店員さん推薦のタイヤの大きさ22インチの自転車を購入し、ペダルをつけてもらいました。
タイヤ22インチは、まるで子供用です。
店舗の駐車場は来店者の車の出入りが多く、購入したての自転車に乗ることはできません。
家まで押して帰り、家のすぐまえの私道で初運転しました。
ところが、いざ跨いでペダルを踏むと、まるで自転車初心者のようにバランスが取れず、一踏みするのがやっとの状態です。
まっすぐに進めるようになるまで小一時間練習をし、やっと母の足が復活したのでしたが、それから半年もしない間に歩くこともままならなくなってしまいました。
軒下に眠らせている自転車は、ときどき蜘蛛の巣や埃を払っていますが、誰も乗ることがないのでどこかしら心もとなげです。
そんな自転車に、ある日、珍客が現れました。(以下、セミの抜け殻の写真があります。苦手な方はご注意ください。)
母の自転車のセカンドオーナーです。
珍客と言えば、今年もハグロトンボがやってきてくれました。
見つけたのは去年と同じ裏庭の排水溝の近くで、近づくとすぐに逃げられてしまったので写真は上手く撮影できませんでしたが、いつ見ても美しい。
身体も黒なので、これは雌です。
i-am-an-easy-going.hatenablog.com
母に介助が必要になり、二人三脚の生活が始まってはや三か月が経とうとしています。
あとで読もうと溜めてしまった新聞を母が寝ている間に開きますが、一か月分程度はあっという間に積読(つんどく)です。
久しぶり山のなかのいちばん古い紙面を開くと、スマホの通信障害や参院選の候補者の政策記事が踊っていました。
今開いている紙面の一面は、銃弾に倒れた安倍元首相の生々しい写真です。
高速道路に新幹線、飛行機…徒歩を基準に考えれば、未来へのタイムトリップは可能になったと言えるそうですが、どんなに技術が進んでも時間を過去に戻すことはできないのだと痛感します。
事件の発生は、少なからず、母や私の心もざわざわと揺らしました。
自分たちの状況だけでなく、地球全体が重苦しい。
もうずいぶんと長い間、明るいニュースを目にしていません。
「天寿を全うするだけですよ」
母の自転車の前輪につかまるセミの抜け殻から、そんな声が聞こえた気がしました。
私はとても虫が苦手ですが、日々の生活も今と言う時代もなにもかもが怖くて仕方ない状況にあっては、庭のそこここに残るセミの抜け殻や雨の合間でさえ鳴くセミたち、毎日どこかから訪れるハグロトンボらがとてもたくましく愛おしく感じられます。
セミの抜け殻はこのまま暫くはそっとしておくことにしましょう。。。