迷子の日記。行ったり来たり。

本当に本当に本人以外にはどうでもいいようなことをつらつらと書き連ねています。このブログにはアフィリエイト広告を使っています。

夏休みのおわり

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まさにイラストのような子供でした。新学期が始まる直前に頭を抱える・・・。

今年は、コロナウイルスのおかげで、何もかもが異例ずくめです。

 

夏休みもしかり。

春先の外出自粛要請のあおりを受けて、一部の学校では、酷暑の中、8月中旬から新学期が開始されています。

 

ただ、当たり前のことですが、暦・・・カレンダーだけは、何があろうと、変わらず、一日ずつ日が変わり、淡々と次に進んで行きます。

 

どんな状況にあろうとも、全ての人に等しく、今日は、8月31日。

どうあがこうと、今日で8月はおわりなのです。

 

一部の社員からひどい嫌がらせを受けて、去年の7月に会社を辞めてから一年。

七転八起*1していたつもりでしたが、冷静に振り返ると、ながーい夏休みの中にいただけだったような気もします。

 

子供の頃は、1学期の最終日、成績表と一緒に配られる『なつやすみのとも』にいつもこころ躍らせていました。

 

『なつやすみのとも』まだ存在しているのか、気になってネットで検索してみたところ、全国区ではないことが分かりました。

ウィキペディアによると、『なつやすみのとも』の扱いについては、各都道府県に委ねられていたらしい。

学校や学年によっては不採用のケース、市販品を採用しているケースも存在する。

夏休みの友 - Wikipedia

そもそも『なつやすみのとも』ってナニ?と世代に関係なく知らない方がいらっしゃると言うことなのですね。

ついでなので、『なつやすみのとも』についての説明を引いておくと、以下になります。

 『夏休みの友』(なつやすみのとも)とは、日本において、主に公立小中学生を対象に夏休みの宿題として課される夏休み課題用冊子のことである。学校によっては、『夏の友』『夏の生活』『夏休み帳』などの名前が付けられている場合もある。

夏休みの友 - Wikipedia

 表紙は、大抵、兄弟とおぼしき男の子と女の子が描かれていました。

 

虫取り網をもって、虫取りかごを斜め掛けして、大木を見上げている絵。

大木には、蝉とかカブトムシやクワガタがとまっていて、頭上にはサンサンと照り輝く太陽。

真っ赤に塗りつぶした丸の周りに放射状に線の引いてある典型的な「おひさま」です。

 

あるいは、海。

遠くに帆船が浮かんでいて、砂浜ではスイカ割りをしている。

目隠ししてスイカを叩く棒を高く振り上げているのがお兄ちゃん。

もちろん、空には定番の「おひさま」です。

 

花火の絵のときもあった気がする。

おぼろげな記憶なのに、勝手に鮮明な絵が浮かんできます。

 

終業式が終わったら、家まで走って帰る。

 

お昼ご飯もそこそこに、ランドセルから『なつやすみのとも』を引っ張り出して、早速、算数や国語のページを解いていきます。

 

夏休みの宿題は一週間で終わらせる!

あとは毎日遊んで過ごすのダっ!

 

そんな野望を掲げて数日はがんばるのですが、読書感想文、自由研究、絵日記・・・夏休みの宿題の定番と共に、すぐには解けない問題があっという間に登れない山のように積もって、高く立ちはだかり、いつの間にか、1日に一回も頁を開かない日の方が多くなる・・・。

 

結局、始業式の前日まで山は崩れず。

 

生まれ変わったら、もっと計画的な人間になります。

生まれ変わったら、もっと真面目に人生をおくります。

 

小学生らしからぬ (^-^; 懺悔の言葉を心の中でつぶやきながら、部屋に籠って、母に見つからないよう、こっそり、やっつけ仕事を繰り返しておりました。

 

明日から9月。

何度目かの初出勤。

 

何度も何度も、今度こそは、と思っていましたが、いまだに夏休みの最終日を続けている。

 

そんな感じです。

*1:しちてんはっき。ななころびやおき。何度、失敗しても、あきらめず、たちあがって奮闘すること。

夏バテという病

気持がすっきりしない。

やる気が全くでない。

 

異常に眠い。

 

もうすぐ、このダラダラ生活に別れを告げなければならないのに。

 

寝ても寝ても、眠い。

 

本を読んでいても、Amazon Prime Videoで映画を観ていても、たまらなく眠い。

 

焦る。

 

友人からきたLINEさえ、返信するのも煩わしい。

 

病気だ。これは。

 

なんという暑さ。

 

エアコンを22℃にしても、2階は一向に部屋が冷えない。

 

これはきっと「夏バテ」という病だ。

 

ずいぶん、粘りましたが、今日書けるのはココマデです(-"-)

 

【おすすめ商品】Amazonで名刺入れを買いました!

                                <a href="https://www.photo-ac.com/profile/900692">まぽ (S-cait)</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真

昨年、ハラスメント満載の会社を辞めた時、これでもう二度と名刺交換をするような仕事にはつかないだろうな、と思い、 早々に名刺入れを処分しました。

 

ひどい会社でした。。。

 

それまで使っていたのは、ヴィトンの黒のエピ。

買ってから10年以上愛用していたものです。

 

けれど、その会社で使ったために、名刺入れをみるたび、思い出すのです。

嫌なことばかり。

 

捨てるには忍びないので、買取サービスに引き取ってもらうことにしました。

ルイ・ヴィトンの高価買取はこちら

 

大切に使っていたので、10年使っていても、きちんとした金額で買取っていただくことができ、とてもありがたかったです。

色々な土地を一緒に旅した品物です。

次の方に大切にしてもらえたらいいな、と思いました。

 

その後、ほぼ一年の長い紆余曲折を経て、何とか、新しい就職先にたどり着くことができました。

 

とはいえ、労働者は搾取されるのだ!

 

9月1日採用にも関わらず、今から、何度も会社に呼び出され、資料を山と渡され、9月1日、初出勤から出張です。

 

さすがに、この時期、県境を越えることはありませんが、既に名刺が作成されている・・・。

 

資料の山と連日の電話やメールでのやりとりに、早くも、なんだか嫌気が差し、新天地への期待どころか、胸騒ぎしかしない。

 

だが、しかし。

 

まずは、名刺入れ。

 

ヴィトンの名刺入れを買ったときは、やる気がみなぎり、未来はきらきらと輝いてまぶしく感じていましたが、今は、「急場しのぎ」一円でも安く、それなりに見えるものがほしい。

 

早速、Amazonで検索します。

なんと。

革製の名刺入れが、3千円くらいで、何種類もあります。

 

急場しのぎのつもりが、探しているうち、気持ちが浮き立ってくる。

 

結局、RICKERS 名刺入れ 牛革 本革 レザー 男女兼用 4 ポケット サックスブルーに決めました。

  

この名刺入れは、サイズが縦7.5cm×横11.0cmで、通常の名刺入れより少し大きめの作りになっています。

 

シボ感のあるシュリンクレザーは、柔らかいのに傷が付きにくくて、扱いやすい。

通勤バッグなどでは、好んで選んでいた素材です。

 

これなら、名刺交換のとき、窮屈なポケットから、名刺を引っ張りだそうとして焦ることはありません。

 

名刺は50枚入るので、長期出張や複数の訪問先があるときでも安心です。

 

注文して、翌日には届きました。ありがたい。

 

あんなに憂鬱に感じていたはずなのに、届いたばかりの名刺入れを手に取ると、何となく背筋が伸びてくるから不思議。

 

先のことは分かりませんが、貯金も再び底を突き、前に進むしかありません。

 

新しい名刺入れをお供に、いざ、出発です。

 

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【過去記事】

 

i-am-an-easy-going.hatenablog.com

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【本の紹介】生活を彩るトリシア・ギルドさんの本3選

                                <a href="https://www.photo-ac.com/profile/900692">まぽ (S-cait)</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真

トリシア・ギルドさんは、イギリスの女性インテリアデザイナーでありインテリアコーディネイターです。

 

生活は、食べて寝る、の繰り返しではもったいない。

私たちの生きているこの世界は、こんなにも色に溢れている。

 

高級な家具や調度品をあつらえなくても、いくらでも彩り豊かな生活をおくることはできるのです。

 

そんなことを、カラフルな写真と共に教えてくれるのが、トリシア・ギルドさんの本。

参考にして模様替えをするのもよし。ただ、ながめて、目の保養にするのも良し、です。 

 

1.ホームスタイリングの全て

「この本は、私のインテリアデザインについての考え方をまとめたものです。(P.9)」とあるように、玄関、リビングルーム、書斎、キッチンやダイニングルーム、ベッドルームなど、家を構成する各部屋ごとに、その部屋の役割と家全体との調和を考えたトリシアさんのデザインが、惜しげもなく紹介されています。

 

配色や、レイアウトなど、参考にできるところは多い。

 

手軽に取り入れられそうなのは、ファブリック。

クッションカバーや布張り箱、ベッドカーテンなど、細かい作り方がイラスト入りで紹介されています。

 

収納庫の奥に眠らせている端切れを引っ張り出してきて、早速、作ってみたくなります。

 

見ているだけでは勿体ない、楽しくなるような一冊です。

 

 

日本では1990年に初版。古い本なので、画像では表紙のイメージが分かりませんが(↑上)、原書(↓下)で使われている美しい写真が日本版でも使われています。

 

2.住まいのカラー

「私の人生と仕事に深い影響を与えてきたのは、色と、色の可能性です。この本は色へのオマージュです。」冒頭で示されている、トリシア・ギルドさんの言葉。

 

この本は、インテリアの本と言うより、一冊の画集といったイメージです。

 

ところどころで引かれている偉大な画家たちの言葉が、違和感なく本書に溶け込んでいます。

 

たとえば、マティス

「私の色選びは、(途中略)観察から、感覚から、そして経験という人間のもっとも核心的な特質から色が決まるのだ。」

 

たとえば、ゴッホ

「春は、未熟な緑のとうもろこしと、ピンクのリンゴの花。(以下略)」

 

色には命がある。

色にこだわり、色を愛するということは、この世に生を受けたことを存分に享受していることだと思わずにはいられません。

 

美しく生命力のある一冊です。

 

 

3.色の魔法に魅せられて

以前にも別の記事で紹介したのですが、何より装丁が美しい。

本書は、針金でなく、糸で綴じられています。

 

糸綴じ(いととじ)とは、書籍などの冊子で、中身となるすべての折丁(印刷した用紙を冊子の大きさに折りたたんだもの)の背の部分を糸でかがって綴じ合わせることをいい、「かがり」ともいいます。
丈夫で、冊子をノドまで開くことができることなどから、折丁を綴じて冊子のかたちにする方法のなかではもっとも本格的なものです。

糸綴じ - いととじ | 武蔵野美術大学 造形ファイル

 

「糸綴じ」という手法で本書に使われている糸は全部で6色。

黒、青、水色、黄緑、ピンク、紫。

気づいたときの感動と言ったら。

 

テーマカラーごとにコーディネイトされたアンティークな部屋では、家具やカーテンだけでなく、飾られた花や絵、テーブルの上に置かれた本にまでこだわりを感じます。

 

決してくすんでいない、カラフルな空間がそこにはありました。

 

最新の流行を集めたヒンヤリと冷たい部屋もいいですが、写真から見えてくる、古いものへの愛着とともにある日常に、深い豊かさを感じます。

 

贅沢な一冊です。

 

 

 

 

【『色の魔法に魅せられて』についての記事です】

 

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トリシア・ギルドさんについて教えてくれたのは、石田ゆり子さんのエッセイ『天然日和』でした。 

 

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【本の紹介】晴れた日にはキッチンで

初回投稿日:2020-08-26  更新日:2022-03-12

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『晴れた日にはキッチンで』


著者は飛田和緒(ひだかずを)さん。

 

本書は、日記形式で綴られたレシピ集です。

初版が2005年2月なので、15年以上前の日記。
日ごとの日記にタイトルが付いているのが読みやすい。

 

日記には、何月何日という日にちとその日のお天気だけが記されています。

正式に何年に書かれたものかの記載はありませんが、春→夏→秋→冬→春→夏→秋と2年弱の日々の記録が本になっているのです。

 

いつ書かれたか、正確な日付(何年とか何曜日とか)を記すことで特定の日のイメージが想起されることを避けたのかもしれません。

 

本を手に取る人それぞれにある、いい日、わるい日。 

この本を手に取った人が、穏やかな気持ちで最後まで頁をめくることができるように・・・そんな配慮だと思ってしまうのは、少し深読みでしょうか。

 

料理家がレシピ付きで書く日記なのに、この本には、写真が一切ありません。 
全てイラスト。 

ほぼ、全ての日に作ったメニューが、イラストと文字だけで綴られている。 

 

本は、B6サイズのコンパクトな大きさです。

その小さなスペースに、きゅきゅっと詰め込まれた食材や調理手順のイラストと手書き文字の説明がかわいい。

 

レシピは、和食を中心に、気取りのない居酒屋メニューから、超簡単デザートまで何でもあります。

筍の下ごしらえや、梅干しなどの保存食のレシピもあります。

 

イラストだけのレシピは、意外にも、無駄がなくて分かりやすい。

真似してすぐに作れそうなものもたくさんあります。

 

調理器具が大好きなので、料理の盛り付けイラストに描かれた器や、なべ、菜箸、おろし金、すり鉢などもとても興味深い。 

 

本書は、飛田和緒さんが30代後半から40歳になるまでの日記です。

当時、ご主人はレーサーだそうで、ゴールデンウィークは例年、富士スピードウェイというサーキットでのレースに出場なさっていて、不在だったそうです。 

 

和緒さんの誕生日は、5月3日。

ご主人の誕生日は、5月5日。

 

お祝いの日。いつも和緒さんは、自分のためだけのご飯を作っていたらしい。 

 

それが、和緒さんが40歳になる誕生日の年、珍しく、ご主人が家にいられます。

サーキットが改修工事だったからだそうですが、その日のタイトルは「今年はひとりじゃない」 

 

お友達を招いて、居酒屋メニューでわいわいがやがや、楽しそうです。

 

食を愛する人の周りには、自然と人が集まってくる。ふと、そんなことを考えました。

 

この年、和緒さんは40歳で初めてのお子様を授かります。

例年と違って賑やかに過ごすご夫婦の誕生日。

幸せが生き生きと伝わってくるようです。 

 

◆◆◆

この本のことを知ったのは、女優の石田ゆり子さんのエッセイでした。

 

ゆり子さんのエッセイには、食や雑貨についての話がたくさん出てきます。

その中で、食を大切にしている人は素敵だ、と紹介されていたのが飛田和緒さんだったのです。

 

生きることは食べること。 

 

たしか、石田ゆり子さんはエッセイの中で「食べることを大切にしている人は、ていねいに生きている」と言うようなことを書いています。 

 

日々、丁寧に生きる。

簡単なようで難しい。

 

だから、そんな風に暮らしている人の暮らしをちょっとのぞかせてもらって、刺激をもらう。 

うらやましさや、憧れとともに、なんだかとても親しみを持って、あっという間に2年を食べつくした感じです。 

 

『晴れた日にはキッチンで』

新しい生活様式のヒントが、たくさん見つかるかもしれません。

 

 

【飛田さんを知るきっかけとなった石田ゆり子さんのエッセイの紹介です】

 

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【本の紹介】『片づけの心理法則』byメンタリストDaiGo

 

                                <a href="https://www.photo-ac.com/profile/1677909">n*****************m</a>さんによる<a href="https://www.photo-ac.com/">写真AC</a>からの写真

片づけに関する本が好きです。

困ったもので、読んでいるうちに、現実の空間がサーッときれいになっていく気がする。

この爽快感と達成感がたまらないのです。

 

読み終えるとすぐに本の内容を実践したいと思うのですが、実際は、手つかずのまま終わってしまうことの方が多い。

私って・・・最強?

自己嫌悪を通り越して、こんな愚かな言葉さえ過(よ)ぎります。

 

そうして、なにごともなく日常は続いていくのです(-"-)

 

この本。

『片づけの心理法則』は、そんな、片づけの入り口で行ったり来たりしている人や、ミニマリストのごとくに片づけたのに、なぜか快適な生活ができていない人に向けて書かれています。

 

たとえば。

そもそも片づけの目的は「自由な時間を増やし、やりたいことを実現するできるようにする(P.19)」こと。

そのためには、「迷う時間、探す時間」を極力減らす必要がある。

 

多くの人が片づけに失敗するのは不要なものを見極めようとするから。

そうでなく「本来の片づけとは、大事なモノ、持ち続けるモノを選ぶこと(P.54)」

 

誰もが、気づいていそうで気づけなかったことが端的につづられています。

 

好きなものだけに囲まれた生活に憧れながら、理想と現実は違うものだと諦めていましたが、視点を変えれば、簡単に手に入るかもしれない。

 

まさに、目からウロコ、納得させられます。

 

なかなか片づけられない方。

ミニマリストとは別の切り口の片づけの指南書として『片づけの心理法則』一読の価値あり、です。

 

一冊読み終えた頃には、きっと自分なりの片づけのプランニングができているはず。

そして、その先に、あたらしい未来への展望が開けるかもしれません。

 

 

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【母と暮らせば】母、指を切る

お昼前のことでした。

「おねえちゃん(私のことです)」階下から母が呼びます。

 

再就職が決まり、詳細についてスマホに電話がかかってきたりするので、基本的に、母が私を階下から呼ぶことはありません。

 

再就職云々がなくても、のどの調子が芳しくなく、母はあまり大きな声で私を呼ぶことはなくなりました。

 

それが、私を呼んでいる。

何事かと、読んでいた本を置き、慌てて階段を数段降りたところで

「ちょっと指を切っちゃって」

 

少しのことなら、母は私を呼んだりはしません。

 

「大丈夫!?」

すぐに部屋に戻り、絆創膏をあるだけ持って、再び、バタバタと階下へ降りると、

「輪ゴムで縛ってほしいの」

 

えっ!?

 

「ちょっと、手を離すと血が噴き出すから、お母さん、押さえとかなきゃだめだから」

 

輪ゴムなんてどこにあるのか分かりません。

 

新聞紙をまとめるビニールひもがそばにあったので、それを持って母の前にひざまずく。

 

右手親指です。

 

「第一関節をぎゅっと縛って」

 

「痛くない?大丈夫?」言いながら、言われるように全力で縛りました。

 

「一体どこをどう切ったの?とりあえず、しっかり傷口をふさぐ絆創膏を持ってきたから、これを貼りましょう」

母に言うと。

 

「手を離すと、血が噴き出るの」

何がどうなっているのか分かりません。

 

大量の絆創膏の中から適当な大きさのものをさがして、母の指に巻こうとする。

私の指を使って、どこを切ったのか確認します。

 

「親指のどの辺?」絆創膏を貼る場所を知りたいのに、指を切った時の状況を母は詳しく語ろうとする。

 

どうやらスライサーで千切りキャベツを作っていたらしいのです。

 

「あ。これがね、おかあさんの指の先。ちゃんと拾ったんだけど」

言いながら、全力で傷口を押さえている左手を少しだけそっと外して、小指でつかんでいたタオルハンカチを私の目の前に落とす。

 

「それそれ。お母さんの親指の先」

 

言った瞬間、傷口を押さえていた手が緩み、本当に血が噴き出して。

その光景を見た途端、頭がぼわんとして気が遠くなりそうになる。

 

何とか、むりやりに二枚の絆創膏を巻き、

「ああ、びっくりした」と言う母に

「病院に電話するから、これから行きましょう」と言いました。

 

「そうねえ」母は妙に冷静に「はい、これが診察券」と引き出しから取り出して渡してくれる。

 

かかりつけの病院が総合病院であることを心の底から幸せに思い、電話します。

受付の方に母の名を告げると、すぐに状況を聞いてくださる。

 

「料理中に指先を切ってしまったんです。出血がひどいのですぐに診ていただきたいのですが」

「どれくらいで来られます?」

「15分以内には」

 

非常にスムーズに連絡できました。

 

「じゃあ、ちょっとお母さん行ってくるわ。これじゃ、自転車は無理だから歩かなきゃだめね」という母に、

「私もついて行くわ」というと

「ありがとう」と安どの表情を浮かべる。

 

大慌てで、身支度をして、財布と保険証と診察券等々、病院グッズを持ちます。

 

マスク!マスク!

 

こんな時も、マスクだけは手放せない。

マスクは、きちんと付けると炎天下ではとても息苦しいので、母の顎にかけます。

こうしておけば、病院に着いたら、ひょいと鼻先まで上げるだけです。

 

徒歩15分。母はよく頑張って歩いてくれました。

 

◆◆◆

 

かかりつけ医は、昔の知り合いです。

「久しぶりだね」声をかけられて、その人が、当時の面影がないくらいに痩せていることに少しショックを覚えます。

 

もう、母とその人との付き合いの方が、私とよりずっと長い。

 

看護師さんは、慣れた感じで

「ちょっと傷口を見せてねえ。あら、こんなに縛っちゃって」

全力で縛った紐を手で解こうとしている。

 

「すみません。私が全力で固結びにしてしまったので・・・」

「ホントねえ。ハサミを使おうかなあ」

ゆっくりとした動作に、冷や冷やします。

 

作業をしながら、

「どうしてたの?」普通の会話の調子で母に尋ねる。

「スライサーってあるでしょう。あれでね、今日は、スイミングスクールに行こうかなあって思いながら、キャベツをね・・・」

 

まどろっこしい母の説明を、急かすことなくそのまま聞いてくださる。

 

私はと言えば、ゆっくりと進む会話と、噴き出す血に、気分が悪くなってきてフワッと身体が浮きそうになります。

 

「キャベツだったら、不潔じゃないから、このままテープ使おっか」

「元気だった?」

看護師さんに指示を出しながら、流れるように、先生が私に近況をたずねる。

 

「マスクをしてるから、顔がよく分からないね」

大慌てで、眉さえ整えずに飛び出してきたことが、急に恥ずかしくなりました。

 

◆◆◆

 

治療は、驚くほど簡単でした。

 

麻酔も何もありません。

 

傷口の洗浄や消毒もありません。

 

止血用の被覆材を患部に当て、粘着効果のあるガーゼを巻きます。

 

「これは、止血用の被覆材だから。3日後にまた来て。今度は、肉が盛ってくるような薬の入った被覆材に替えるから」

 

「防水のカバーなどはないのですか?」と尋ねると

「うーん。あるけど、上手く巻けるかなあ?やってみようか?」

 

お願いして、巻いていただいたら完了です。

 

「麻酔も痛み止めもなくて大丈夫ですか?」恐る恐る尋ねると

「大丈夫だと思うけど、ロキソニン出しとこうか・・・」

 

かなり深い傷でしたが、一針も縫うことなく治療が終わるなんて。

技術の進歩はすごいなあとつくづく感心したのでした。

 

◆◆◆

 

私が運転できないせいで、母を炎天下に15分も歩かせなければならない。

申し訳ないなあと思いながら、先に母を家に帰します。

 

支払いを済ませて、薬を受け取って自宅に帰ると、ケロッとした母がいました。

 

「まあ、不思議なのよ。ちっとも痛くないの。」

「ふふ。先生、あなたのこと時々話してたのよ。マスクで顔がよく分からないけど…っておっしゃってたわね」

 

出かける時、そのままにしていたテーブルの血はきれいに拭き取られていました。

 

こわごわ入った台所も、事故の形跡がありません。

 

途中までスライスされたキャベツもきれいで、残りの1/8くらいのキャベツは炒め物にちょうどよい量です。

 

何事もなかったかのように、先生のことや昨日のテレビのことなど話す母に心から感謝します。

母は気丈です。

 

「鎮痛剤なんてお母さんいらないわ。あなたにあげる」と言う母に、

「あとで痛みが出てくるかもしれないから、お守りとしてしばらくは持っておきましょう」と言ったのですが、案の定、昼食の後少しズキズキするらしく一錠飲みました。

 

疲れたのでしょう。

昼食後、すやすやと寝息を立てている母の姿を見て、上手く言えませんが、この上ない幸せを感じました。

 

それと同時に、これからは、こういうことが増えるのかもしれない。

強くならなければ、とも思ったのです。

 

◆◆◆

 

【15年ぶりの母との生活はいろいろと刺激的です】 

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